はじめに
職場は、さまざまな人が集まり、組織の共通の目標に向かって協力し合い、成果を出す場です。これから新しい仕事に就く人が、新しい環境に飛び込む際、「自分はどうすれば受け入れられるのか?」という疑問を抱くのは、何ら不自然なことではありません。
ALT+編集長の私は、これまでに、組織の責任者の立場で、国籍を問わず、数多くの新卒者、新任者と面談し、個人の適性を見極め、チーム内で差配をしてきました。その経験を通じて、周囲から歓迎され、信頼される人材になるためには、重要な条件をいくつか満たす必要があることがわかっています。本稿にて、その条件について解説していきたいと思います。
なお、前稿「新しい職場環境で輝くために – 今から始める仕事の心構え」1は、雇われる側の目線で、仕事の心構えをご説明していますが、本稿は、雇う側の目線を踏まえ、クリアしたい条件をご説明する内容となっています。前稿についても、併せてご覧いただければ幸いです。
1.職場に受け入れられるための6つの条件
新しいメンバーが、職場に受け入れられるためには、6つの条件があります。
6つの条件
1)自分を表現できること
2)仕事への責任を理解していること
3)自分を管理できること
4)相手を尊敬できること
5)自分の力を理解していること
6)成長する意欲があること
以下、順に解説します。
1)自分を表現できること
職場で受け入れられるためには「仲間として一緒に働きたい」と思われる存在であることが重要です。
人間関係が円滑であることは、仕事のパフォーマンスにも直結します。挨拶やコミュニケーションを積極的に行い、職場の一員としての役割を意識しましょう。そのためには、まず、自分から心を開き、自分を正しく表現できることが重要です。そのような心の姿勢は、自然に態度として現れ、共に働く同僚たちはもちろん、上司に対しても、好意的な姿として映ります。自分がチームの一員であることを理解し、積極的に自分を表現して、信頼を勝ち取っていきましょう。
前稿の“3.「前向きに受け入れる」心構え”に、自分をわかりやすく表現することについて具体的に説明しておりますので、ぜひご確認ください。
2)仕事への責任を理解していること
仕事には必ず責任が伴います。たとえ小さなタスクであっても、真摯に取り組む姿勢が求められます。
ところで、「仕事には責任が伴う」とはどういうことでしょうか。わかりやすくするために、編集長の考えとしては、「自分のタスクが影響を及ぼす範囲」を想像すると良いと思います。そのためにまず、仕事をしている自分の周りを取り囲んでいる存在をイメージしてみましょう。ざっと列挙するだけでも、以下のような存在が思い浮ぶと思います。
仕事をしている自分の周りを取り囲んでいる存在
- 人間:同僚、上司、部下、お客様、お客様のお客様、協働者、・・・
- 組織:自分の所属会社、自分の所属部署+関連部署、会社の得意先、取引先、協力会社、・・・
- 環境:システム、マーケット、工場、学校、・・・(仕事の物理的環境。時に組織に含まれる)
- 資源:お金、時間、データ、材料、機械、アイデア、・・・
- 家族:自分の家族、親族の構成・・・
いちばん下の「家族」以外は、経営者から見た『経営資源』と呼ばれるものの一部です。英語で『リソース』といったビジネス用語に当たるものです。自分を取り囲むものには、そのリソースにプラスして、家族・親族の存在があります。
さらに広い視野で言えば、前稿“4.「失敗を恐れない」心構え”において図解した通り、企業活動は社会の利益を追求するため、所属する個人一人一人は、社会にも囲まれています。
仕事は、自分を取り囲む存在に対して、何らかの影響を及ぼしています。仕事の結果が良ければ、良い影響を及ぼします。仕事の結果が良くなければ、悪意がなくとも、良くない影響を及ぼします。このように、社会に出て、報酬を得るために自分が提供した労働は、どこかに何らかの影響を及ぼしています。つまり、仕事には、他の存在に対して影響を与えるため、その分の責任が発生するということです。
具体的にどこまで影響範囲をイメージできるかは、その道の経験値によります。不慣れな環境に飛び込む場合は、具体的なイメージは乏しいかもしれません。しかし、いろいろなものに囲まれて仕事をしている事実だけは意識しておくべきだと思います。
職場では、「約束を守る」「期限を守る」など、基本的なことが重視されます。正当な理由がなく、約束や期限を守れないことは、身近な存在の足を引っ張り、悪い影響を及ぼします。たった一人の自分勝手が、組織を足元から崩すこともありますので、気持ちを引き締めることが必要です。
逆に、自分が果たすべき役割をしっかりと理解し、結果に責任を持つ姿勢を示せれば、周囲からの信頼が得られるでしょう。
3)自分を管理できること
自分を管理する能力、すなわち自己管理能力は、現代の働き方において、特に重要視されるスキルの一つです。
自己管理能力のうち、「時間」「タスク」の管理は基本中の基本であり、自分なりの方法を身につける必要があります。時間管理やタスク管理ができる人は、効率的に仕事を進めることができ、他の人に迷惑をかけることも少なくなります。
【Column】時間とタスクは密接に関係している
時間とタスクは密接に関係しています。繰り返し機械的に処理をする作業ではなく、成果を求められる仕事の多くには、“成果”と“期限”があるからです。
仕事が完了した状態を成果100%としたら、その完了に向けて、その仕事がどのような作業(=タスク)に分解されるかを考え、手順を計画します。計画ができたら、作業の品質を確保しながら、作業を進め、限られた時間内に仕上げる必要があります。このように、任された仕事をきっちりと自分で管理できるかどうかは、基本的なスキルとして重宝されます。
ただし、経験が不足していると、仕事をタスクに分解したり、それぞれのタスクにどのくらい時間がかかりそうなのかを予測したり、手順を考えたりすることは難しいでしょう。そのため、初心者には、分解された後のタスクの単位で仕事を渡されます。その時点で、タスクは単純化された状態になるので、“適度な”ペースで、丁寧に作業をすれば終わる量になるようになっているはずです(分解された作業計画が悪い場合は別の問題ですが、ここでは取り上げません)。そうして初心者は、周囲からアドバイスを受けながら、コツコツと作業を覚え、確実に終わらせるところから始めます。
ここで意識すべきことは、「自分の時間管理」ができないことが原因で、「単純化したのだからこれならできるだろう」とリーダーから渡された仕事が、未達成に終わってしまうことを絶対に避けることです。
1日には、自分が仕事に使える時間があります。その限られた時間の中で単純とはいえ作業を組み立てる必要があります。その意味では、理解が浅いまま効率の悪いやり方で作業を続けたり、細かい部分に変にこだわって時間を浪費したりする姿勢をまず改めるべきです。「自分が時間を作り出す」という意識を持って、自分の時間をしっかりと管理する、ここから始めてみましょう。
また、健康管理やメンタルケアも含めて、自分自身を整える力を持つことで、安定したパフォーマンスを発揮できるようになります。自己管理の細かなテクニックについては別途ご紹介の機会を設けたいと思いますが、このように自分を管理する能力は、チーム全体の生産性を上げるためにも非常に重要視されるスキルであり、リーダーとしては、「自律」して任せられるメンバーはとてもありがたい存在です。
特に、新しいメンバーが、正当な理由なく、遅刻や納期遅れを繰り返した場合、自己管理能力が身についていないという第一印象を与えてしまうので注意が必要です。一方、きちんと自己管理できる人は、職場に対して大きな安心感を与えることができます。
4)相手を尊敬できること
どんなに優秀なスキルを持っていても、相手を尊敬できない態度は信頼を失う原因になります。逆に、編集長の考えとしては、尊敬できる人は、周囲からもいつか尊敬される日が必ずやってくるといっても過言ではありません。尊敬は、それくらい貴重な姿勢です。
職場では、年齢や職位、経験が異なる人たちが共に働いています。相手の意見や立場を尊重し、謙虚な姿勢で接することが、円滑なコミュニケーションと良好な人間関係を築くためのポイントとなります。
前稿でもお伝えしたように、周囲から多くの学びを得るためにも、この相手を尊敬できる姿勢は重要なものとなりますので、ご参照ください。
5)自分の力を理解していること
自分の得意分野や限界を理解している人は、適切な自己表現ができるだけでなく、無理な挑戦を避けることができます。一方で、自分の力を過小評価してしまうと、せっかくの能力を活かせない場合もあります。
この、自分が本来持つスキルと、自分がやるべき成果との間のバランスを崩し、背伸びをしすぎて無謀にチャレンジしたり、遠慮がちだったりすると、当人はもちろん、チームに対しても悪い影響が出てきます。自己分析を通じて、自分の強みと弱みを明確にし、それを職場でどのように活用できるかを考えることが大切です。
6)成長する意欲があること
意欲は、働く者の心の奥深くに根ざしていて、他人が全く入り込めない領域です。本人の意思がなければ、意欲を持つことができません。逆説的にいうならば、本人だけが、この意欲を持つか・持たないか、そして意欲を強く持つか・弱く持つかを支配できます。
職場では、新しい知識やスキルを積極的に学び、成長し続ける姿勢が評価されます。意欲があれば、精神も研ぎ澄まされ、多少の苦難にもめげることなく、本人の成長のスピードも早まるでしょう。
職場で成長したい気持ちを持っているメンバーの姿は、リーダーの目にとても心強く映るものです。また、仕事に慣れていないメンバーが、「成長したい」という姿勢を見せることは、周囲にフレッシュな空気を与えてくれ、好ましく映ります。失敗を恐れず、フィードバックを受け入れ、日々の業務を通じて自分を磨く努力を怠らないことが大切です。
過去の投稿「編集長流 仕事の流儀」2にご紹介した、私の哲学の一つである『情熱』とも深い関係となっておりますので、こちらもぜひご覧ください。
2.おわりに
本稿に挙げた6つの条件は、本人が積極的に身につけ、乗り越えていく条件です。成長してほしいからと、周りがいくら助けようとしても、本人にその気がなければ手の打ちようがありません。しかし、情熱を持てば周りにきっと伝わります。新しい職場に受け入れられるために、日々の行動や姿勢を意識することで、確実に周囲からの信頼と評価を勝ち取っていきましょう。
このブログを読んだ方が、職場での信頼を築き、自信を持って新たなステップを踏み出すヒントになれば幸いです。
脚注
↓概要動画です
*冒頭のイメージ:Canvaにて作成(pixabay)