はじめに 読書は大事とわかっているけど、本を読んでも内容がなかなか頭に入ってこない方へ
読書があまり得意ではない方、実は多いのではないでしょうか。
編集長である私も、実は、若き時代は読書が苦手でした。
読書は大事、それはわかっている。一流の人をはじめ、同じ会社に勤めていて活躍している多くの人は読書をしている。
何かのヒントが欲しいと書店に行って、気になるタイトルの本を見つけた。この本を買おう。
早速その本を開いて読んでみたけど、20ページにも満たないのに気が散ってきた。頭に入っている気がしない。
頑張って最後まで読んでみた達成感は一定得られた。でも何日か経つと驚くほど忘れている。いつもこの繰り返し。
自分は読書があまり向いていない。好きになれない。
若き編集長の嘆き(行動パターン)
しかし、職業柄、不足する知識や方法論を短期間で吸収する必要があったことから、苦手といっている暇もなく、持ち前のストイックさで大量の本を読み、無理やりカバーしてきました。
そうこうする間に、時間との戦いを制する気概や、どうしても忘れてしまう不甲斐なさを克服するためのいくつかの工夫を思いつきました。
今は読書の意義深さが身にしみてわかるので、立派な趣味の一つとして、自宅の書棚に常時数百の書籍が並んでいるほどの愛読家になりました。
本稿では、過去の自分と同じように、読書に苦手意識がある方をはじめ、より効果的に読書をしたいといった方も対象に、僭越ながら私流の本の読み方をいくつかご紹介したいと思います。
本は著者の頭の世界観を一望できる存在
本には、ビジネス、カルチャー、教育、自己啓発、など、さまざまなジャンルがあります。私が書籍を手にする動機は、おおよそ以下のような衝動に駆られたときです。
(定期刊行物の雑誌や小説の場合は違うので、ここでは含めません)
- 自分に知識が足りない
- 最近関心があって全貌をつかみたい
- その分野の専門性の深さを知るために本の厚さでもって知りたい
良書は、こうした衝動的な欲求に応えてくれます。
ここで、書籍の構造について考えてみましょう。
一冊の書籍には著者がいて、その著者が考えるテーマの世界観が網羅的・構造的に示されています。
(ビジネス・教育・自己啓発系の)書籍の構造*
- 著者の頭の中にある世界観が、どう説明すれば伝わるのかについて、何度も練られたロジックの元に目次ができている
- 目次には、重要な論旨を示す文章や、流行語などの周知の言葉が並んでいる
- 目次のテーマに応じて、言葉の定義、背景、総論、各論、と論理が展開されている
- さらに個別の各論の中で、言葉の定義、背景、全体像、具体的な説明というロジックが繰り返されている
*ALT+編集部の独自見解
つまり、書籍は、あるテーマについて著者が考える世界観を一望でき、詳細な情報の位置付けもはっきりしているということです。
なお、インターネットに無限に存在する情報は、書籍から得られる情報と比べて、やはり断片的です。ある事柄を調べるために、インターネットでいろいろな情報を調べた張本人が、その世界の全貌を自分で決めているようなイメージです。インターネットはもちろん便利な手段ですが、やはり、情報の幅と深さにはムラがあるため、全体をしっかりと把握したい目的には心許ないと思います。
また、さらなる書籍の利点は、別の著者が、同じテーマを書いている場合に、そのテーマの多様性を知ることができることに加え、複数の著者の主張が重なる部分は、信ぴょう性も高まるうえに、重要な情報である、という捉え方ができることです。
書籍で語られた世界観を自分の糧にすることで成長につなげる。そう考えて、私は日々、読書を大切にしています。
では、私が読書の効果を上げるために意識している「読み方」をお伝えしていきます。
読み方その1「人にどんな本だったかを説明する気で読む」
1点目は、読書をしながらの気持ちの持ちかたです。私はビジネス書を拝読することが多いのですが、正直どの本も200ページ以上あり、それなりに骨は折れます。しかしどの本でも最初から最後まで必ず通読するようにしています(私流の速読法は別の機会でご説明します)。
その通読で工夫していることは、『「この本どうだった?」と人に聞かれたことを想像して、それを説明する気持ちで読むこと』です。毎回これを徹底しています。自分が知りたいことに対して良かったのか悪かったのかについて、自分なりに総合評価をして伝える感覚です。総合評価した結果を伝えるには、その理由として、どこが良くてどこが自分に合わなかったのかも同時に伝える必要があります。
人にどんな本だったかを説明する気で読む読み方のメリットは、この本を読み終えたときに、自分で組み立てた評価が頭の中に残ることです。自然に、全体の概要を押さえようとするセンサーが働き、かつ、要所が記憶できるため、その本からなんらかのプラス材料が得られます。内容があまり望んだ結果に結びつかなければ、別の書籍を探すかもしれませんが、一つの判断軸が自分の中にできるため、決してその本との出会いは無駄にはなりません。
読み方その2「1回の読破で2つのポイントを記憶する」
2点目は、読書をしながらの頭の使いかたです。本を読み進めるうちに、『なるほど』『これはいい表現だ』と思う瞬間があります。しかし、先に進めるほど、前に出てきた良い情報の詳細や、良い言い回しの表現などは、どんどん忘れていってしまいます。同じ書籍を愛読書として何十回も読み直せば、記憶に刷り込まれるかもしれませんが、読書に充てる時間も限られていて、なかなかそうはいきません。
それが読む前からわかっているので、私は、大きめの付箋を手元に準備し、これはと思ったページに、自分が記憶したいキーワードや論旨(そのページに書かれている内容のまとめ)を書いて書籍に直接貼るようにしています。最初はどれもこれも重要と思ってしまいがちですが、続けるうちに自分の癖がわかってきて、次第に、真に重要と思うべき場所は絞れるようになりました。
読み終えた後、自分の付箋を見直して、その中から2つ、自分にとっての重要ポイントを選び、意識して記憶するようにします。本を閉じても、その2つだけは頭に残す心がけです。2つでは少ないと感じる方もいるかもしれませんが、事実、私の記憶量は、読書1回で2つも覚えていられれば御の字、のレベルです。一番もったいないのは、せっかく読んで理解した気になって、その後の自分のアウトプットに反映できないパターンです。上記、その1との合わせ技になるときも多いですが、確実に書籍から2つの知識を得ることができる点で、読む前と比べたら成長している自分を感じられるので、これを実践しています。
読み方その3「インデックスをつける」
最後の3点目は、後でその書籍を有効活用する場面を想定した手の動かしかたです。なんらかの動機で手に取った書籍には、業界知識であっても自己啓発であっても、その時その環境で、自分が知りたいと思った内容が書いてあります。
長年読書を続けていてわかったことですが、ある書籍を読んでからだいぶ後になって、『その話はあの本に書いてあったな』ともう一度引っ張り出したいときがしばしばあります。私は、そのときに備えて、後から辞書のように情報を引けるよう、インデックスを貼るようにしています。今では手の込んだインデックスシールが100円ショップなどで簡単に手に入ります(特に半透明のシールが使いやすいです)ので、それらを駆使します。インデックスには、上記その2に記載したキーワードを書くこともあれば、後での引きやすさを意識した見出しを書くこともあります。
いずれにしても、手を動かしたことで若干の記憶の助けにもなりますし、なんの気なくパラパラと眺めたときに、インデックスをしたときの記憶がよみがえり、無意識的に頭に刷り込まれます。そしてインデックスが貼られた書籍が並んでくると、自分だけのリアル検索ライブラリができ上がります。
私のライブラリが充実してからは、「読む」というよりも、このパラパラと「眺める」行動が増えています。それだけ、どの本のどこに何が書いてあるかが刷り込まれた結果とも言えるでしょう。
おわりに
今回、ご紹介した私流の本の読み方ですが、巷には同じく読書を題材に、専門的に書かれた書籍が多数出ています。どの方法でも、漠然と読み流すのではなく、記憶に残して自分の成長のために使うことが目的ですので、どれが正解、という性格のものではありません。それぞれに合った方法を模索するきっかけになればと思っています。断片的にせよ、インターネット上の情報の読み方にも応用できると思います。
せっかく先達が著してくださったありがたい知の宝庫である本が、新しい明日を迎える自分の大きな財産になる。そんな気持ちで、今後も読書を続けていきたいと思います。
今後とも、ALT+編集部をよろしくお願いいたします。
*冒頭のイメージ画像:グラフィックデザインツール「canva」にて作成