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ITの上流を目指すならココから始めよう!上流工程を制する3つの思考法


「上流工程ができるようになるにはどうすればよいか?」

この記事では、IT関連業界に飛び込んでしばらく経験を積まれた30歳前後の方から特に相談が多い「上流工程」への疑問について、編集長が考えるポイントをお伝えしたいと思います。上流は奥が深く、考える対象が多岐にわたり、”これ”という正解がありません。また「これができたら上流ができる」と外部に言えるまでの定義が難しく、いわば経験を積み重ね、その場その場で考えて行動してきたことによって身に付く職人的な要素も多いとも言えます。

そのため、上流に必要なスキルを問われれば、その種類は非常に多い1わけですが、まずは上流の大まかな概念を共有・理解した上で、絶対に今から身につけておきたい、厳選した3つの思考法をご紹介します。

「上流工程」とは、どこからが“上流”なのか?

ITに関連するビジネスを推進する組織では、上流ができることが昇格の条件になっていることがあります(暗黙の条件である場合を含め)。
では、そもそも“上流”とはどこからを指すのでしょうか。
上流とは、単に要件定義や設計書を作る段階ではありません。プロジェクトの目的や課題を明確にし、顧客やチームの意図を形にしていく、「設計の前に考えていることを見せる」とも言える領域です。成果である構想書や計画書はもちろん重要ですが、その考えを導く“プロセスの質”が問われる段階なのです。

“見える情報の受け手”から“見えない情報の表現者”へ

ものづくりの段階に入った後は、与えられた仕様を正確に実装することが求められます。
一方で、上流では「何を作るべきか」「なぜそれを作るのか」「作れるか」等を考えることが仕事です。経験を積みながら、その考えに基づいた行動を起こし、一つ一つ証明しながら潰していく。そのように、自立して仕事をマネジメントしていく要素をどんどん加えていくことで、上流の担い手として一人前になります。
言われたことをこなす姿勢から、言われていないことを引き出す姿勢へ。見えない情報を表現する姿勢へ。報告や提案のときに、「この仕様の背景には何があるのか」「本当の目的は何か」と一歩踏み込むだけでも、視点はぐっと上流に近づいていきます。

曖昧さを整理し、行動につなげる力が成長を分ける

上流工程では、正解が最初から存在しません。顧客の要望もチームの方針も曖昧で、矛盾を含むことが多いものです。
その曖昧さを「わからない」と放置するのか、「仮説を立てて整理する」のかが、成長の分岐点になります。
優れた上流人材は、曖昧な状況を構造的に整理し、関係者が合意できる言葉や表現に変換し、可視化します。これは技術的なスキルよりも、思考を繋ぎ、全体を捉え、イメージをデザインする力、さらに、次のステップを描き、段取る力が試される領域です。
まだわからないことを理由に思考を停止し、自分の仮説なく、ただ外部の知見を求め続けて寄せ集めるだけでは、残念ながら上流を捌いていることには繋がりません(このような場合、求められた側は仮説を置いて知見を出していることがほとんどです)。

編集長流・上流思考における3つの超重要スキル

① 構造的に捉える

「プロジェクト計画」の構造をざっくり表現している途中のイメージ図|ALT+編集部

プロジェクトを動かすうえで最も基本となるのは、「構造的に捉える」力です。
見えない情報を見えるように表現するには、目の前の題材の全てを俯瞰し、分解し、統合し、縦横のつながりを見極める力を持つことが必要です。上記のイメージは、私、編集長が「プロジェクト計画」をどう捉えているか試しに示してみようと、プロジェクト計画の構造的に表現してみた例です。もちろん、人によって発想や関心が違いますので、正解はありません。この例では、左から右へいくに従い具体度が上がるように要素を並べるとともに、「コスト」は計画の中で見積というやや異色の存在なので右側に切り出す発想で表現をトライしてみましたが、こうやってみるだけでも、「あ、運用コストが入ってないや」と自分で気付いたりするものです(笑)。
日々の作業や資料を見ながら、「これで全部か?」「なぜこうなっているのか?」を自問し、“なぜ”と“つまり”を行き来する癖をつけてみてください。
全体の枠組みをつくる力が、最終的には意思決定の精度を高めます。

② 仮説・想定で一歩前進させる

上流工程では、情報が出揃ってから動くのでは遅く、想定を立てて進めることが大切です。
「聞かないとわからない」こともあるでしょう。しかし、そこで立ち止まらず、「AかBのどちらかのはず」「もしAなら次はこう動く」と仮説を出して先に動いてみること自体に価値があります。こうすることによって、相手への質問が「はい」か「いいえ」かのクローズドクエスチョンになりますし、前進するスピードも圧倒的に早くなります。
たとえ的外れでも、的外れだと分かることが収穫です。できるだけ先回りする思考を止めず、現時点での最善を仕掛ける姿勢が、信頼される上流の人材に近づける原動力となります。

③ 相手の頭をスッキリさせる

もう一つ大事なのは、「相手の頭をスッキリさせる」力です。
これは単に整理整頓ではなく、相手から情報を引き出し、論点を整理し、不安を減らす力のことです。
上流では、クライアントが決めた意思や、出してくれた情報に敏感に反応することが求められます。
相手には、”自分が決めたんだ”と思っていただき、自分は、物事を推進する立場で混乱や不安を減らすように接する。巷では「コンサルタントは正解を出す存在」だとも言われますが、私の定義は厳密には少し違っていて、「最終解はクライアントが出すもの(または決断するもの)であり、コンサルタントは「ギリギリまでクライアントの意思決定をサポートする存在」であると思っています。それを果たすことができれば、立派な「コンサルタント」として、自然と会議や議論の中心に立つことができます。

まとめ:一瞬の勇気と入念な準備が上流にも重要

構造的に物事を捉え、仮説を置いて論理を展開し、相手の頭をスッキリさせて不安を解消する力。この3つの力を伸ばすには、「日々のタスクの中で実践のチャンスを自分から探す」ことが近道です。「やってみます」と手を挙げる勇気は、上流への最短ルートです。
すただし、その勇気を裏づけるのは“準備”です。相手や相手の環境を理解する努力を怠らないことです。
プロジェクト資料をすべて読み込んだり、業界知識を書籍などから得て、相手企業の事業内容や最新の取り組みと照らし合わせたりするなど、まずは行動してみる。そういう努力が、勇気を後押ししてくれるでしょう。
その積み重ねが、曖昧な状況を整理し、未来をデザインできる「上流の思考力」へと変わっていくのです。

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