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我思うモードへの変換のススメ


画像:Canvaにて作成

1. 情報のうねり

私生活でも仕事でも、私たちは日々、膨大な量の情報にさらされています。
ネットニュースやSNSに流され続ける情報は、無限の幅と深さをもち、追い求めればどこまででも追い続けることができます。いろいろな人々がつぶやく情報を横目で眺めながら、「推し」の発言にはやや感度を高めてチェックする、ネット上の情報とはそんな付き合い方をしていらっしゃる方が多いと思います。

会社勤めの方は、組織が発する情報や、直接ご自身が絡む仕事の情報に加え、先輩や上司からの指示や顧客からの依頼、場合によっては周辺の噂話といったふうに、毎日、メールやチャットも交えていろいろな立場がそれぞれ発する情報に囲まれての日常かと思います(正社員時代の私も同様に右往左往でした)。

書店に行けば、さまざまなジャンルに分かれた書籍が出版されています。ビジネス、教育、カルチャーから、お金、趣味、自己啓発といった、かゆいところに手が届くような題名の書籍が並び、書籍代を出せば何でも情報が手に入ります。

私の場合、良い情報に触れたとき、幸せな気分になります。きちんと調べることもないままに、知った気になっていたことが「あ、そういうことなんだ」と分かったとき。いつかちゃんと勉強すると思いながら後回しにしていつの間に不安やストレスになっていたところに、頭にスッと入ってくる快感。文字の情報でなくとも、疲れているときに、忘れかけていたお笑いのネタのショートムービーが偶然目に入って思わず吹き出す。ニュースサイトを見ていて、コメント欄を覗いたときに自分が思っていたモヤモヤ感を言語化してくれている文章を見たときの共感。

そんなことを繰り返しながら、何の疑問もなく毎日が流れていきます。

2. 「お前はどう思う」

その日常の中で、ふと我に返る瞬間があります。頭の中、情報だらけだな、と。そのタイミングは概ね、疲れているときです。

飛び交う情報は、所詮は他人が考え、他人が再構成した情報なのですが、それを見て、あたかも自分がゼロから考えたかのように錯覚している。怖いのは、情報を「眺めて」いるだけの自分は思考停止状態で、事実上、他人の土俵の上にいること。この状態を、私は『お客様モード』と呼んでいます。

私はこれに気づいたとき、自分の頭の中を軌道修正するようにしています。「お前はどう思う?」と、もう一人の自分から、自分の心へ問いかける。なぜ軌道修正するのかというと、情報収集が過ぎると自分を見失うからです。

若手の頃、難解なプロジェクトに入って下働きをしていたのですが、地位のあるリーダー格の社員が上にたくさんいて、まさに船頭だらけの状態の組織に属していました。悪いことに、船頭同士が意見調整しない、というよりもむしろ仲が悪い。その煽りを受けて、「偉い人」がそれぞれに唱える持論を聞きすぎて、こちらはほぼ新人ゆえに、異なる方向の指示を全部叶えようとして、挙句の果てに振り回されました。蓋を開けてみれば、自分が何をやっているかわからなくなっていました。情報に振り回されると病んでしまう、そんな体験談です。

情報収集は、生きていくために不可欠な作業なので、真っ向から否定する気はありませんが、一瞬立ち止まって我に返るタイミングを持つことが重要だと私は思っています。モードを切り替えて、「お前はどう思う?」と自分に問うてみる。あるニュースを見て、自分の意見を頭の中で述べて言語化してみる。会議で、他の参加者の発言を聞いて、自分ならどう説明するかを考えてみる。背景を探ってみる。

この、切り替わった後の状態を、私は『我思うモード』と呼んでいます。

実はこの『我思うモード』を始めたのは、ある師匠の一言がきっかけでした。他の人が言っていたことを単にアレンジして説明していたことに気づいたこの方が、「お前はどう思っているんだ」と私に質問されて、何も答えられなかったのです。
意識的にこの質問を自分にするようになってしばらく経ったとき、絶大な効果が現れてきました。

いつでも、どこでも自分の意見が言える状態。俗にコメント力(りょく)などとも言われますが、これを極められれば、社会人としての評価を上げる大きな武器にもなり得ると思っています。自分は特に、コンサル業の現場で恩恵にあずかりましたが、仕事であろうとプライベートであろうと、自分の考えを述べられることはとても大切だと思います。

念のためお断りですが、他人の言うことに全く耳を貸さず、自分勝手(または独りよがり)に物事を考えて突っ走れば良いと言っている訳ではありません。自分勝手かどうかは、周りの環境次第な面もあり、個人のセンスでご判断いただきたい部分ではあります。しかし一方で、たとえ自分勝手な発想であったとしても、何も考えないよりはマシなのかもしれません(考える癖が姿勢として身につくと、次第に粗さは取れてくるものです)。

自分はどう思うかを常に考えることで、他に振り回されることなく、自分の時間を自分のものとして使える場面が多くなると思います。他を愚痴ることなく、正しく反省することにつながるので、自分ならではの個性が磨かれて良い方向に成長できるのではないか。「頭を使え」とはこういうことなのかと、だいぶ後になってから、その悟りの境地を一部だけ垣間見た気がしている今日この頃です。

共感いただけた皆様におかれましては、『お客様モード』から『我思うモード』への切り替え、ぜひお試しいただければ幸いです。

今後とも、ALT+編集部をよろしくお願いいたします。

*同記事は、2024年10月にメディアプラットフォーム「note」から移管した内容をもとに一部内容を編集したものです
*冒頭のイメージ画像:グラフィックデザインツール「canva」にて作成


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