「証明力」と聞いて何を思い浮かべますか?数学でしょうか?身分証明でしょうか?
社会、特にビジネスの現場においても同様に、さまざまな場面で証明が行われています。そして、活動時間の多くが、他人への「説明」に費やされています。どのような場面においても必要とされる多くの説明に、力があればと感じる方も多いと思います。自分の口から出る説明に、相手にしっかりと伝わる「証明力」が備われば、ビジネススキルとして強力な武器になるでしょう。
この「証明力」は、社会で生き抜くための非常に重要なスキルと考えています。本記事では、このスキルについて解説していきます。
はじめに、筆者であるALT+編集長の自己紹介をさせていただきます。1これまでITコンサルタント、プロジェクトマネージャー、組織マネージャーとして、さまざまな現場で働き、多くの人と関わってきました。そして20年以上のサラリーマン生活を経て、独立して会社を立ち上げ、今に至ります。
負けず嫌いで、何でも自分で経験しないと納得できない性分です。正社員時代には、たくさんの仕事をこなし、失敗や挫折も経験しましたが、その度に自分と向き合い、環境を変えながら乗り越えてきました。その結果、たどり着いたスキルが「証明力」です。
この「証明力」は、特に若い世代の社会人や学生にとって大切なスキルです。なぜなら、早く身につければ身につけるほど、社会での活躍に直結するからです。では早速本文に入ります。
1. 証明の構造
証明とは、「相手が正しいかどうかわからないことを、証拠や一般的な考え方をもとに論理的に説明し、相手に納得してもらうこと」です。簡単に言うと、1.命題を決める、2.論理を組み立てる、3.説得する、という3段階で成り立っています。
この構造はシンプルに見えますが、実際に重要な場面でこれを成功させるのは難しいことが多いです。ここに、証明の奥深さと価値があります。
2. 3つのキーワード
先ほどの図にあった「命題」「論理」「説得」の3つは、証明を成功させるために欠かせない要素です。
命題は「これから証明を考えるテーマ」のことです。たとえばビジネスでは「この課題の解決策は〇〇であると仮定する」、日常会話では「今日の夕飯は寿司にしようか」などが命題に当たります。次のステップの論理を明確に組み立てるためには、正しい命題の設定が重要です。
論理は、その命題を証明するための理屈です。自分の意見をただ伝えるだけではなく、なぜそれが正しいのか、証拠を使って相手に説明する必要があります。これはロジカルシンキングと呼ばれるスキルで、社会人にとって必須の能力です。
説得は、論理的に組み立てた説明を相手に納得してもらうプロセスです。どんなに素晴らしい論理でも、相手に伝わらなければ意味がありません。相手に分かりやすく、かつ興味を引くように話す力が求められます。
こうした命題・論理・説得の3つの段階をしっかり準備し、取り組むことで、証明は成功に導かれます。私の鉄則は「成功の確率は、準備の質と時間に比例する」ということです。どんな場面でも、準備を怠らず、証明力を高めることが大切です。
3. 命題の設定は「相手」を意識
誰しも、説明がうまくいかなかった経験があられると思います。私も毎日のように反省していますが、反省すべきは「当日の言い回し」ではなく、もっと根本的な部分かもしれません。
たとえば、過去に「3分間スピーチ」がある組織の朝礼のルールであったとき、何度かうまくいったこともあれば、全然ダメな日もありました。その当時、ひたすらに緊張しながら場数を踏む経験は積めたものの、なぜうまくいかないのか、その根本原因がよくわからず、プレゼンが苦手だと思い込んでいました。
今になって振り返ると、失敗の原因は、相手を意識した「命題」が曖昧だったことにあると思っています。話す内容にばかり意識が向いていて、相手がどう受け取るか、どんな反応を期待するのかを考えていなかったのです。
また、私が社内レビューで説明した時の失敗。しっかり準備して発表したのにも関わらず、「君がこの場で我々に何を求めているのか伝わらない」と指摘されました。この時も、命題がはっきりしていなかったのです。相手に何を伝えたいのか、何を相談し、何を解決したいのか、その目的が不明確だったことが失敗の原因でした。
これ以来、どんな場面でも「命題」を明確にすることを意識しています。説明や説得がうまくいかない場合、命題に立ち返り、何を証明したいのかを見直すことで、解決の糸口が見つかることが多いです。
特に、話すのが苦手な人は「命題」を意識し、論理を整理することで、少しずつ成長できるはずです。経験上、証明力を高めるために大切なポイントだと思っています。
4. 証明力がある人とは
相手が自分の長所をよく知っている間柄であればあるほど、証明力が上がります。たとえば、信頼されているブランドは、前置きを省いて、商品を紹介できます。また、新入社員よりも人望の厚い部長が「こう決めた」と言う方が、納得感があります。証明力を上げるには、証明したい内容に応じて、相手への認知度を高めることも一つの手段といえます。
また、画家やスポーツ選手のように、論理や説得ではなく、作品やパフォーマンスそのもので相手に感動を伝えられる人もいます。彼らは、結果を出すことで観客の心を動かし、言葉ではない方法で自分のアウトプットを証明しています。これはロジックを超えた証明力の一例です。
おわりに
最後に大事なのは、3つのキーワードに対するセルフレビューです。自分の命題や論理、説得がしっかり成立しているか確認しましょう。相手に説明する前に、まず自分が納得できるかが鍵です。この準備が証明の成功を左右します。質の高い準備を重ね、証明力を高めることが大切です。
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*同記事は、2024年10月にメディアプラットフォーム「note」から移管した内容をもとに一部内容を編集したものです
*冒頭のイメージ画像:グラフィックデザインツール「canva」にて作成
- 僭越ながら、私の人生録を別記事「ITコンサルタントの人生録」に投稿しておりますので、ぜひご覧いただければ幸いです。 ↩︎